ライフプランニュース 10月号

 

1.はじめに
高齢化の進行などを要因として、国民医療費が年々上昇しています。平成26年度は前年度同様40兆円超え(1人当たり約32万円)となっていて、国の財政に大きな負担となっています。そこで国では、適切な健康管理が行われている条件のもとで、軽度な身体の不調については自分で手当することを推進しています。そのひとつがセルフメディケーション(自主服薬)です。これにより、国民の自発的な健康管理や疾病予防の取り組みが活発となり、医療費の適正化につながると考えられています。「セルフメディケーション税制」は、その一環として今年からスタートした新しい税制で、一定の医薬品を薬局やドラッグストアで購入した場合に、所得控除できる制度です。
2. 概要
個人が平成29年1月1日~平成33年12月31日までの間に一定のOTC医薬品(いわゆるスイッチ医薬品)を購入した場合、1年間に支払った対価額の合計(税込み)が1万2千円を超えるときは、超えた分の金額(注:上限あり※)について、その年の総所得金額から控除することができます。これにより、所得税・住民税の負担が軽減されます。この税制は、扶養家族が使う分も合算可能です。なお、この税制を適用する際には、個人が「健康の維持増進および疾病の予防への一定の取り組みを行うこと」が要件となっています。※上限100,000円-下限12,000円=最大88,000円
3.対象となる医薬品
いわゆる「スイッチOTC医薬品」と呼ばれているものが対象です。これは、医師が処方する医療用医薬品から転用された83成分を含む、ドラッグストアや薬局で処方箋なしに購入できる医薬品のことを指します。
この税制の対象となるOTC医薬品(約1,500品目)は、風邪薬、胃腸薬、鼻炎用内服薬、水虫・たむし用薬、肩こり・腰痛・関節痛の貼り付け薬等で、厚生労働省のHPに掲載されています。また、この税制の対象となっている一部の医薬品のパッケージには、その旨を示すシールなどが貼り付けられているものもあります。たとえこの税制の対象となる成分が入っている医薬品でも、薬局で製剤したものは対象外となっている点に注意が必要です。
4.健康の維持増進・疾病予防への取組
この税制を適用するためには、個人が「健康の維持増進および疾病の予防への取り組み」を行うことが要件となっています。確定申告をする人が、定期健康診断・保険者が実施する健康診査・特定健康診査(メタボ検診)・予防接種・がん検診などのうちいずれか1つを受診し、確定申告する際にこれらを受診した際の領収証や、事業主等の証明書などを添付しなければなりません。
5. 減税額のシミュレーション
課税所得500万円の人が、本人分・家族分の対象医薬品を1年間に30,000円購入した場合を想定します。この場合、30,000円の対象医薬品の金額のうち、12,000円を超えた18,000円が課税所得から控除されます。課税所得500万円の人の税率は20%ですので、所得税で3,600円(=控除額18,000円×所得税率20%)、住民税で1,800円(=控除額18,000円×所得税率10%)となり、合計5,400円の減税となります。
6. 確定申告の方法
所得税の還付を受けるためには、この税制を適用した年の翌年の2月中旬から3月中旬にかけて行われる確定申告を行う必要があります。その際、対象となるスイッチOTC医薬品の領収証やレシート、前記のように検診を受けた証明書や予防接種を行ったときに受領した領収証などを添付しなければなりません。また、対象となるスイッチOTC医薬品の領収証やレシートについては、商品名、金額、販売店名、購入日のほか、この税制が適用される医薬品である旨の記載がなければなりません。
7. 留意点
「医療費控除」と併用することはできません。つまり、医療費控除かセルフメディケーション税制か、いずれかの選択適用となります。どちらがトクかは1年間経過しないとわかりません。したがって、医療機関、薬局、ドラッグストアで支払った際に受領した領収証を年初からキチンと保管しておき、双方の控除額を計算して最終的に適用する方を決定するとよいでしょう。
8. さいごに
自主服薬の費用が高額となったケースで、医療費をカバーする新たな制度が加わりました。自主服薬ではない部分の経済的なダメージが大きくなったときに備えて、保険商品を活用するなどのリスクマネジメントを組み合わせて、バランスのよい保障設計を行いましょう。