まだまだ暑い日々が続きますが、朝晩は比較的涼しい日もあり、秋の気配が少しずつ近づいているようです。

秋は体調が不安定になりやすく健康管理に注意が必要ですが、国際薬膳師の大坪モモさんは「秋の健康管理は『秋分』を意識することがポイントです」と話します。

「暦の上では秋は立秋(8月7日)からはじまり、立冬の前日(11月6日)までとなります。この約3ヶ月間のうち、秋分(9月23日)までの“秋の前半”と秋分以降の“秋の後半”は気温が大きく変わるため、その変わり目である秋分で食事や生活習慣を切り替えることを意識すると、健康を維持しやすくなります」(大坪さん)

そこで今回は、秋の前半、秋分、秋の後半のそれぞれについて、東洋医学による食事面や生活面のセルフケアのポイントを教えてもらいましょう。

1.秋の前半(立秋から秋分まで)

秋の前半は昼が夜より⾧くまだまだ暑いですが、この時期の暑さは夏の余熱による「残暑」であり、暑さに隠れて少しずつ秋の乾燥がはじまっています。そのためこの時期は暑さ対策として「体を冷やす食材」を、乾燥対策として「皮膚や粘膜に潤いを与える食材」を積極的にとりましょう。リンゴ、梨、柿、レンコン、キュウリ、トマト、豆腐等は、体をほどよく冷やし、かつ皮膚や粘膜に潤いを与える性質があるので、秋の前半にぴったり。ただし、冷やして食べると体を冷やしすぎてしまうので、常温以上で食べるようにしましょう。

また、この時期は夏の疲れが残りやすく、疲れを引きずってしまうと秋分前後にだるさや食欲不振等の「秋バテ」を引き起こしやすくなります。疲れが気になる人は、激しい運動を控えて体力を温存し、リラックスして過ごしましょう。そして、米、ヤマイモ、ジャガイモ、サツマイモ、キノコ類、カツオ、サバ等をよくとると、疲労回復のサポートになります。

2.秋分

秋分前後は寒暖差が激しく、体調を崩しやすいときです。東洋医学では、昼が夜より⾧い暑い季節を「陽」の季節、夜が昼より⾧い寒い季節を「陰」の季節と呼び、昼と夜が同じ⾧さである秋分は「陰と陽が調和する日」と考えます。そんな秋分の日は、活動的になる昼の「陽」の時間と、休息して疲れを取る夜の「陰」の時間のバランスが釣り合うように過ごすことがポイントです。朝は日の出の時間である6時前後に起きて新鮮な朝の空気で深呼吸をし、日中は適度に体を動かして、日が暮れる18時前後には活動を終えて家でゆったりと過ごし、日付が変わる前に就寝しましょう。すると、陰と陽が調和して心身が安定し、寒暖差の影響を受けにくくなります。夜ふかし、アルコールの飲みすぎ、⾧時間の激しい運動等は陰と陽のバランスを崩すため、秋分の日は避けましょう。

3.秋の後半(秋分から立冬の前日まで)

秋分を過ぎると夜が昼より⾧くなり、だんだん寒くなります。乾燥対策に加えて寒さ対策も必須になるため、皮膚や粘膜に潤いを与えて、かつ、体を温める性質がある食材を選びましょう。松の実、クルミ、ニンジン、アスパラガス、小松菜、ザクロ等の食材が特におすすめです。なお、秋の前半に取り入れていた体を冷やす食材は、この時期からは控えるほか、体を冷やさないために飲食物は温かいものだけをとるようにし、冷たいものや生ものはできるだけ避けましょう。涼しくて運動に適した季節ですが、過剰な運動は体力を消耗して逆効果になります。大量に汗をかく運動や⾧時間の運動は避けて、ほどほどの運動量を心がけてください。

ちなみに、皮膚や粘膜を潤す食材にはほかにも白ゴマ、白キクラゲ、タマゴ、チーズ、牛乳、豆乳等がありますが、これらは体を冷やしも温めもしないため、気温に関係なく秋の前半と後半のどちらにも取り入れることができます。乾燥対策を強化したいときにプラスしてください。夏から秋、秋から冬という季節のグラデーションに合わせて、上手に体調管理をしていきましょう。

 

監修大坪モモさん

国際薬膳師、東洋医学ライター。健康雑誌編集部を経て、東洋医学関連の書籍・コンテンツ等の企画制作に

数多く携わり、国際薬膳師に。東洋医学に関して初心者の方にも、その魅力をわかりやすく伝えることに力を

入れている。オンラインの東洋医学講座も開講中。

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