1.はじめに
一般的な診療では完治が困難な疾病などに立ち向かうため、医療費が高額となっても「先進医療」の受診を積極的に考えている人が増えています。今回は最先端の医療技術である「先進医療」について解説します。

2. 公的医療保険適用外の診療を受けると・・・
通常、公的医療保険が適用となる診療(保険診療)を受けた場合は、医療機関の窓口で3割などの一部自己負担分を支払えば、医療サービスを受けることができます。しかし、保険診療とならない診療を受けた場合は、保険診療部分も含めて公的医療保険から給付されず、全額自己負担となります。
ただし、将来保険診療に移行するための評価を行う「評価療養」や、差額ベッド・時間外診療など公的医療保険の導入を前提としない「選定療養」を受けた場合は、「保険外併用療養費」として例外的に保険診療部分に限り一部自己負担すればよいこととされています。

3. 先進医療とは
先進医療は、まだ保険診療として認められていない医療技術なのですが、厚生労働省で一定の安全性・有効性を個別に確認したもので、将来的に保険診療に向けた評価のための臨床実験と位置付けられているものです。評価療養の一つとされているので、先進医療にかかる医療費は全額自己負担ですが、保険診療を併用して受診した部分については、一部自己負担で受診することができます。
先進医療はどこでも受診できるわけではありません。厚生労働省が認めた指定医療機関で実施される先進医療技術(2018年11月1日現在92種類)に限定されています。
先進医療は将来的に保険診療となる可能性がある反面、先進医療を取り下げられることもあります。従って、先進医療にリストアップされている技術は時々刻々変わります。

4. 代表的な先進医療の内容と費用
先進医療のうち、高額なものの中に、がん治療の最先端技術である粒子線治療の「重粒子線治療」や「陽子線治療」があります。粒子線治療は、がん細胞を破壊する力の強い放射線を用いるもので、早期であれば根治が可能です。治療に痛みがなく、がん周辺の臓器を損なわず、手術による傷跡が残りません。高齢者でも受診でき、社会復帰までの時間が短くなっています。ただし、粒子線治療が適さない部位等があるケースなどに留意してください。いずれも300万円前後となっています(医療機関により異なります)。
詳しくは三井住友海上あいおい生命のホームページ(http://www.msa-life.co.jp)の「先進医療ナビ」「先進医療.net」をご覧ください。

5.先進医療に備える方法~地方自治体の助成・貸付制度~
先進医療を行う医療機関がある自治体では、高額となる医療費を助成するところがあります。例えば神奈川県では、県立がんセンターの重粒子線治療を受ける神奈川県内の患者を対象に、公的医療保険の対象とならない治療費の一部(上限35万円)を助成する制度があります。さらに神奈川県民が県立がんセンターで重粒子線治療を受診するために金融機関から貸付を受けた場合、利子に対する補てん金(利子補給)を行う制度もあります。ただし、後述の先進医療を保障する保険商品に加入して保険金を受け取る場合は、助成・利子補給制度は利用できません。

6. 先進医療に備える方法~保険商品~
疾病等の完治を目指して、高額となる可能性のある先進医療を安心して受診するためには、保険商品で備えておくことも重要です。将来受診できる選択肢を確保するため、死亡保障や医療保障がついた生命保険商品による保障の確保を検討してみましょう。留意点としては、受診したときに当該診療が先進医療となっていることが保険金の支払い要件です。保険に加入した時は先進医療となっていても、受診する時に先進医療となっていない場合(保険診療に移行するか、取り下げられた場合)は保険金支払いの対象となりませんので、注意してください。

7. さいごに
せっかく先進医療の保障を確保しても、保険金の支払いよりも早いタイミングで医療機関に高額な支払いが発生すれば、資金繰りが大変です。そこで、保険会社が医療機関に直接保険金を支払うサービスが準備されていることが重要です。このサービスを利用するためには、事前に保険会社に通知を行なうなどの要件がある点に注意してください。